本年度は『范氏家乗』(以下『家乗』)の版本や所蔵状況に加えて、その編纂過程・および史科的来源の研究を行った。また香港大学・香港中文大学にて資料調査を行い、新知見を得ることができた。その研究成果は次の3点である。 1.『家乗』の編纂について 范氏では宋元時代から族譜の編纂が行われ、明清時代にとくに頻繁となった。現存する『家乗』はすべて清代のもので、乾隆本・道光本・光緒本の3種がある。そのうち乾隆本は明代までとは異なる方針や丁裁を採用し、以後の模範となった。 2.『家乗』の資料的来源について 范氏では、子供が生まれるとすぐに一族の名簿に登載され、これが『家乗』の重要資料となった。ほかに族人の年譜や伝記・文集・書簡、さらには宮府から発給された書類・公文書も、重要資料として採用された。 3.宋版と宗親会について 香港にて宋版『范文正公集』を閲覧し、現在のものとは異なることを確認した。また香港では今日、宗親会が結成され、新たな同族結合の模索が始まっている。
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