1448年2月の「ウィーン協約」から1803年の聖界諸侯領の世俗化までのおよそ350年間の期間における聖界諸侯の国制上の位置を考察することを課題としており、本年度はこの間の全ての聖界諸侯(約400名)のデータの整理を終えた。このデータをもとに、聖界諸侯をいくつかのグループに分けて整理し、それぞれのグループの特色を考察した。また、これらの聖界諸侯と帝国諸機関(帝国議会・帝国代表者会議・帝国クライス・帝国最高法院・帝国宮内法院)との関係を具体的に把握するため、これらの帝国諸機関の構造・組織について整理した。さらに、皇帝と聖界諸侯との関係を把握するために、皇帝の宮廷の構造(書記局・顧問官・外交官)の分析を行ない、聖界諸侯と皇帝の具体的な人的関係を整理した。さらに俗界諸侯と聖界諸侯との関係を知るために、バイエルン大公を対象として、その帝国教会政策を検討した。本年度はこのように基本的なデータの整理および関連する事項についての知見を得ることに研究の重点がおかれた。これは当該分野が我が国において未だ本格的に行なわれていない分野であったため、不可欠な作業であった。またこの作業を通じて、我が国において教義の分野において多くの研究がなされていた宗教改革に関して、その国制史的意義についての理解の端緒を得ることができた。研究期間の最終年である来年度は、当年度の作業を整理し、論文として仕上げることに重点がおかれる。
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