1448年2月に結ばれた「ウィーン協約」から1803年の聖界諸侯領の世俗化までのおよそ350年の期間における聖界諸侯の国制上の位置を考案することを課題としていた。本年度は最終年度にあたり、研究論文を2本発表した。論文「近世ドイツ帝国国制に関する一考察」によってまず、近世の帝国国制史研究を今後進めるにあたって一つの試論的な見取図を公にし、論文「12〜15世紀ドイツにおける司教選出の諸問題」では、近世の聖界諸侯の概要を示すとともに、ウィーン協約以降の聖界諸侯の本格的な研究の予備的作業として、12〜15世紀の聖界諸侯(司教)の選出問題を整理した.この分野はわが国では未開拓な分野でもあり、本格的な論考を発表する前にまずこのような予備的な考案を発表する必要性があると判断した。この予備的な考案の準備の過程において、ローマ教皇と皇帝、ローマ教皇と俗界諸侯およびローマ教皇と聖界諸侯の関係の具体的な把握が重要であることが判明した.そのため論文ではローマ教皇権や教会法上の規定の整理を行い、ローマ教皇がその至上権に基いて、教会法的な規定の外において、司教の任免に大きな影響力を発揮してきた経過を明らかにした.今後数年にわたって本研究成果を公表していく予定である。
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