平成10年度は人骨出土古墳群の事例研究のため、いままでの韓国・金海礼安里古墳群の人骨調査・計測、咸安道項里古墳出土人骨の整理・分析、慶山林堂洞古墳群の出土人骨の分析と関連遺物の調査、東海市湫岩洞古墳群の出土人骨と関連遺物の調査、金海柳下里古墳の出土人骨の分析など、データベース化の作業が集中的に行った。また、日本の古墳で出土する人骨と遺物の埋葬儀礼に関する調査も行い、韓国・古墳の埋葬儀礼の推論と検討に比較資料として活用する。結果、東海市湫岩洞古墳群の場合、人骨から一つの遺構の埋葬順番を推定し、二世代以上による埋葬の結果が複数個体として見れるのを推論した。また、最初被葬者の性別が男性・女性共に確認されることから新羅の古墳社会が双系的性格をもつ社会である可能性も想定した。そして副葬行為では追葬による遺物の副葬区間を推定した。慶山林堂洞古墳群の出土人骨と金海礼安里古墳群の出土人骨に関する分析では男性と子供が共に埋葬させた場合が認められることから、これらの埋葬儀礼に関する検討を日本の例と比較中である。咸安道項里古墳の出土人骨からは被葬者が埋葬された後、白骨化された段階で骨を弄った可能性が認められ、大分市上ノ原横穴墓の例と比較検討中である。韓国で人骨を考古学的資料とし、使用した研究に対する検討も進行中である。これは各研究史がもつ問題点に接近し、人骨資料で解析可能な範囲を明らかにするための作業である。
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