研究概要 |
古墳時代の初頭から前期にかけては、各地域の土器がその基本的な分布範囲を超えて大きく移動することが知られているが、本研究は、これまでの地域研究の成果にもとづいて、土器の移動の状況をより具体的に読み取ることにより、古墳時代社会の検討を行なうことを目的としたものである. 平成10年度は、1,畿内の土器(庄内式土器・布留式土器)の他地域への移動。2、畿内(特に大和・河内)への他地域からの土器の移動・搬入状況、の2項目を中心に検討した. 1, 畿内の土器の他地域への移動 東日本諸地域、および西日本地域への畿内系土器の移動について、これまでの研究成果を整理・検討し、そのうえで各地における畿内系土器出土遺跡を集成した.集成に際しては、各出土遺跡の報告書にあたり、遺跡位置を地形図上に記載し、実測図の縮尺をl/4に統一した土器資料カードを作成した.また、上記の集成データにもとづいて、広島県中屋遺跡、徳島県庄・蔵本遺跡等出土土器の観察・実測図の作成などの現地調査をおこなった. 2, 畿内への他地域からの土器の移動・搬入状況の検討 当該期の畿内において外来系土器の構成比率の高い奈良県桜井市纏向遺跡と奈良市佐紀遺跡の状況を再検討し、両者の比較検討をおこなった.その結果、搬出地の構成比率という観点から、両遺跡の類似点と相違点および古墳時代前期の大和の中心集落における外来系土器のありかたの時系列的な変化が理解された.また、纏向遺跡への外来系土器の集中的な移動の背景についての従来の諸説を整理することで、この課題における問題の所在と遺跡の性格の多様な視点が明らかになった.
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