『先代旧事本紀大成紀』の諸本調査をほぼ終了した。諸本は古活字版、整版本、写本あわせて50数本が全国の図書館、大学、寺院等に現存している。古活字版では、唯一跂文が付されているのが東洋岩崎文庫本で(天理図書館本はその写し)、寛文10年の記がある。それに従えば、整版本はその9年後の延宝7年に刊行されることになる。整版本は、古活字版の内容に従いながらそれに大幅な増補を行っている。その中には、古活字版には見られない新たな説話も含まれており、それらの典拠調査も今後の課題となろう。1つの典拠としては、「帝皇本紀」が秦河勝誕生の話が、『風姿花伝』のそれと同一であることがわかった。『風姿花伝』著者世阿弥は、秦氏の出自であるとの説があるが、そのことも、『大成経』成立基盤の1つの手がかりになると考える。また、『大成経』の後世への影響については、『聖徳太子伝図会』(享和四年刊)をはじめとする、江戸〜明治期の聖徳太子伝に影響を与えている。さらに、『南総里見八犬伝』等の読本にもその説話が取り入れられていることがわかった。このことについては、平成11年度日本近世文学会春季大会にて口頭発表する予定である。さらに、佐々木神社関係の縁起、『三貫柏』『惶根草』などの三枚調和思想の書、『伊呂波童蒙書』(延享元年刊)『神国神字編』などの神代文字についての書にも影響を及ぼしており、今後の詳しい調査が必要である。
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