本年の収穫は思わぬ方向から現れた。これまで、広東省の語り物「木魚書」の語りそのものを発見するのは非常に困難であると考えていたが、版本が大量に出版された佛山市、東莞市の地元研究者とり知り合い、「語り」を知る人物にも出会うことができた。また、彼らとの交流から、佛山と東莞に伝わる旋律を総合的に見たとき、「木魚書」の最も単純な唱法(東莞の農村の歌い方)と南音の関係、南音と龍舟の分布地域、発達の時期などを推し量ることができることがわかった。また、龍舟においては「旋律」の関係上脚韻に厳格な制約があることを知り、南音と龍舟の分布・発展が、本研究で進めつつある脚韻の厳格化の分布地域とピタリと合致したのである。 この、旋律と脚韻について2000年早稲田大学中国文学会春季大会にて行い、論文化したい。 初年度から交流を続けるロシアのボリス・リフチン氏は、99年6月の台湾『漢学研究』誌に論文「新發現的廣東俗曲書録_以明版《花箋記》為中心」を発表し、『木魚書目録』未採録資料を補うとともに、98年の梁培熾『花箋記』会校会評本以来の版本の問題を更に深く追求している。加えて東莞市にて地元研究者楊竇霖氏がヨーロッパ各地の『花箋記』を校訂中であることがわかり、交流のネットワークは更に広がりつつある。 『木魚書目録』データの補正はほぼ最終段階に入ったが、ネットへの公開方法についてはなお模索中である。各地の版本調査を喚起するような、建設的なコンテンツを早急に公開したいと考えている。
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