研究概要 |
H10年度とH11年度の2年間にわたる研究の初年度ということで,本研究課題の主目的である一次資科の雑誌となる選考に時間を割いた.テクノロジーなどの発達により,19世紀末から20世紀初頭のアメリカの社会構造は大きな変革をとげ,女性の生き方も大きく変わった.ジャクソニアン期に急激に増加した女性大衆雑誌は、そうした変化を映し出す直接の媒体てあるため,内容分析をする雑誌の主義や読者層,内容,購買数などにみる読者への影響力を相対的に評価するところから始めた.その結果、将来的に複数の雑誌を比較検討することが必要であるにしろ,まず,1830年7月に創刊され1899年7月に絶版となったGodey′s Magaーzineと,現在も刊行されているLadies′ Home Journalの1884年1月の創刊号から1903年11月号までを考察対象に選び,マイクロフィルムを使った内用分析に入った.両方の雑誌とも,発表年代に多少のずれがあるにしろ,ヴィクトリア朝アメリカの都市に住む中産階級の白人アメリカ人女性をターゲットとしたものであり,保守的な女性像を打ち出す規範をつくった影響の大きい雑誌である.女性大衆雑誌は,アメリカ社会において女性の変化していく出版当時の役割,責任,義務,関心を映し出しているばかりでなく,そうしたものの指針を打ち出し,さらに,芸術や文学を生み出していく機動力となっていた.社会規範を生み出していく積極的な媒体である.来年度は,大衆雑誌に女性像を読みとるばかりてなく,そこに掲載される文学作品を雑誌のほかの要素の中に位置づけて解釈していきたい.雑誌が,特に編集者の思想,収入を依存していた広告などという様々な権力闘争の中から生み出されていたことを考慮にいれた上で,独立した芸術形態として研究されがちな文学作品を,掲載当時の雑誌の文脈の中に位置づけて解釈していきたい.
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