本研究は、アメリカ南部に関する文化表象の歴史的変遷をたどることを旨とした。2年目にあたる1999年度は前年度に引き続き、文学、建築、画像、映像、服飾その他における南部的表象の歴史的な推移を示す書籍、ヴィデオ、CD-ROM等を収集し、包括的な表象文化史研究のための資料集を作成しつつ、それらを授業、学会発表、論文執筆等の現場で活用する方法を模索し、そのうち若干を実践した。授業においては『風と共に去りぬ』あるいは『トム・ソーヤの冒険』を題材として、作品の背景にある客観的な歴史的事象を書籍資料等によって踏まえた上で、それが文学、映像等のメディアを経て具体的に表象される場合、いかなる変容を経るかを明らかにし、その変容の性質をふたたび歴史的事象として客観的歴史に再照合するという方法を実践した。学会発表では「アメリカ研究京都夏季セミナー」において、マーク・トウェイン研究の泰斗、テキサス大学教授シェリー・フィッシャー・フィッシュキン氏を初め、韓国、中国、さらに国内のアメリカ研究者とともにパネリストとして参加し、「世紀転換期におけるマーク・トウェイン」という総合タイトルのもと、研究成果を報告し討論を行なった。その際、世紀転換期アメリカにおける南部的イメージが、当時晩年を迎えていた作家マーク・トウェインの具体的な作品構造、執筆の心理的背景を特色づける一因となっていたことを論じた。マーク・トウェインに関しては本研究で得た資料あるいは方法論を活用し、その成果を著作として発表する(2000年2月末ないし3月初旬の出版の予定)。
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