本年度はまず古ドイツ語によるラテン語文献の翻訳書であるTatianとIsidorのテキスト・データベースをインターネットを介して入手し、次に研究補助の協力を得てNotkerによるラテン語文献の古ドイツ語への翻訳のテキスト・データベースを作成した。これらのテキスト・データベースを基に、テキストの精読と並行してコンコーダンス作成ソフトウェアやデータベースソフトウェアを活用しながらラテン語の原典と古ドイツ語の翻訳を分析し、用例データベースを構築した。 このデータベースを利用することにより、上記の翻訳文献におけるラテン語原典と古ドイツ語訳における動詞及びその形式の対応関係を明らかにすることが可能になった。それにより古ドイツ語における完了分詞一般の性質、完了分詞の機能において接頭辞ge-が果たす役割、完了分詞を伴う種々の構文の振る舞いなどを実証的に検証することが可能になり、内外での研究成果も踏まえながら考察した結果、古ドイツ語における完了分詞及び接頭辞ge-の意味的性質を様々な角度から明らかにすることができた。 また、上記の作業と並行して関連する領域に関する豊富な先行研究を収集し、検討を加えた。さらに古ドイツ語の文学作品であるOtfridの「福音書」のテキスト・データベースの作成を委託により完成させたので次年度は古ドイツ語オリジナルの文献に基づく用例データベースを構築し、古ドイツ語における完了分詞を伴う諸構文の性格を明らかにする予定である。
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