入手した記号論およびコノテーション研究関連文献をもとに、コノテーションの性格を検証したが、やはり「コノテーション」そのものを分析対象とした研究は少なく、1970のレスラー以降も、意味のレベルまたはコミュニケーションにおける機能についての分析にとどまったものが多いように思われる。残念ながら、出版社の業務停止により入手できなかった文献(Bochum Publications in Evolutionary Cultural Semiotics)があり、まだまだ記号論と文化に関する文献の検証は不十分ではあるが、これまでの検証結果を踏まえて、「コノテーション」の位置付けおよび性格記述をまずまとめあげる予定である。 また、意味のレベルまたはコミュニケーションのレベルにとどまらない「コノテーション」の機能と作用の可能性を探り出すために、「広告」という記号体系の分析も視野に入れてきた。昨年度に比べ、実際の分析例の収集は進んだが、映像編集が捗らず、「コノテーション」の存在を明確にするにはまだ資料が不足している。しかしながら、「広告」において認められる「イメージ機能」が、送り手や受け手の経験および知識をもとに作用していると思われる側面と、「コノテーション」があくまでも「デノテーション」をもとに作用しているという性格との接点から、「広告」という記号体系における「コノテーション」の存在およびその機能と作用の可能性を導きだすヒントを得たので、この点についても上記の「コノテーション」についての記述をもとに一見解をまとめ、最終的にはその二つを柱にして、言語以外の記号体系における「コノテーション」の機能と作用を分析し、「コノテーション」とは何かという問いについての答えを求めてみたいと考えている。
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