今年度は辞書の編纂に力を注いだ。10万語のチベット語・日本語のデータベースと格闘する試行錯誤の連続であった。まずはデータベースの設計しなおしから始まった。設計に当たっては、既存のチベット語の辞書の構造に依拠するのではなく、2カ国語辞典として高度な発展段階にある英和辞典などを参考に、また近年盛んになってきた辞書学の研究成果も参考にしながら、チベット語を学習する日本人にとって使いやすい辞書とは何か、という点を重視するようにした。現在、以下の作業が進行中である。いずれも今年度から始めた作業である。 1 クロスレファランスができるように種々の情報を随所に埋め込む(活用辞典としても使えるように) 2 重要な単語に関して、どのような動詞、修飾詞、名詞と結びつくかを示すコロケーションを記載する 3 500余りの基本的な単語をキーワードとして設定し、そこに意味的関連のある単語を列挙する 4 500余りの重要な語根をキーシラフルとして設定し、同じ語根を持つ同根語を列挙する 5 これまでの述語動詞の意味研究を生かして述語動詞の記述を充実させる また、10万語のデータベースを縮小し、見出し語数約2万、用例をあわせて4万語程度の規模にする予定で作業を進めている。上述のクロスレファランス、コロケーションを辞書中に適切に配備することによって、規模は小さいけれども広く活用できる辞典になる予定である。 さらに、チベット語の口語テキスト「チベット民話集」(全7巻)、「チベット・ラサの年中行事」などをパソコンで利用できるように当研究室で電子化し、データベースを作成することによって、辞書にまだ記載されていない単語を調べ、選定し、それらの単語の意味を執筆中である。
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