オロモ語の動詞構造のうち、テンス・アスペクト体系は、形態的には未完了相と完了相の区別と迂言法による複合時制を持っている。そのうち複合時制はかなり複雑な体系をしており、本研究ではアルシ方言話者の複合時制の体系を記述し、他方言と比較することで形態と機能の関係を明らかにすることである。本年度はまずオロモ語の動詞を公刊されているウォレガ方言の辞書からすべて抜き出し、それをデータベース化した。同時に態(使役・受動・再帰)にかかわる動詞の派生について整理した。具体的には派生動詞と自動詞・他動詞の区別との関係について調べ、どのような意味論的な裏付けのある動詞が派生化を被るのかについてまとめた。その際、他動性や動作主性や状態変化性といった言語類型論的観点を入れた。 またすでに現地で収集したオロモ語の音声データをDATから入力できる音声分析機器CSLで分析した後、データベース化し、コーパスの有効利用ができるシステムの構築へ向け整理作業をした。 アスペクト形式を単なる時間形態素だけを対象にするのではなく、動詞の語彙アスペクトや時間副詞も絡めた形で複合的な記述をするのが本研究の特徴である。そこで本年度では、日本語の語彙アスペクト別の例文のデータベースを作成し終え、フィールドワーク時にオロモ語の動詞の語彙アスペクトと比較することで、より普遍的な記述に役立てることにした。
|