研究概要 |
研究2年め、最終年度にあたる平成11年度は,京阪方言を中心とした漢語のアクセントについてさらに計量的研究を進め、次のようなことを明らかにした。 (1)一字漢語サ変動詞のアクセントは,平安京都語では,おおむね借用原音の声調と対応した一字漢語部分のアクセントとサ変動詞部分のアクセントを接合したものと考えられているが,現代京阪語では,a)連濁の有無 b)2モーラめの種類 およびc)語頭音の有声性という語形特徴のみから予測可能な結合型複合語アクセントを示すこと。 (2)後部に2モーラ要素がくる5モーラ以上の長さの複合名詞アクセントを現代東京語・京阪語について分析すると,後部要素が和語の場合,後部要素のアクセント類別からおおむね規則的に複合名詞アクセントが手測されるのに対し,漢語の場合はそうではないこと。 (3)漢語に関する既提案のアクセント類別語彙が示す分布は,少なくとも一字漢語についてみると,i)借用原音における音特徴・声調特徴の違いや,ii)日本語への借入時期の違い(いわゆる先音,*音等の違い)だけからは*明されない偏りを含んでいること。 (1)〜(3)の分布結果についてはそれぞれ,『文法と音声II』,『現代言語学の射程』,『女子大文学(国文篇)』51号で発表し,またその一部をWebサーバ上で公開している。
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