世界中の言語による空間のカテゴリー化には、自己中心的な「相対的指示枠」と環境主体の「絶対的指示枠」があることは、先行研究で明らかにされたが、日本においてはその両方が存在しており、今年度のアンケート調査で「絶対的指示枠」を日常の身辺空間にまで適用している地域が多くあることが判明した。そうした用法が特に顕著に見られる地域としては、高知県高知市を挙げることができる。これは、山と海をランドマークとした生活を送っている人々の空間把握方法においては、地形的な要因が大きいことを示唆していると思われる。 高知市の被験者(サンプル数47人)の回答では、静的空間を見るかぎりでは「絶対的指示枠」を適用する空間領域は、 地理的空間->身の回り->身体部位 と範囲を狭め、身の回りは高校生以上、身体部位にまで及んでいる例は80才以上の高齢者に限られた。しかし、動的空間を代表する道案内のコンテクストでは、身の回りの物事に対しても「絶対的指示枠」でコミュニケーションをはかるケースが20才代間でも観察された。 これまでの調査により、空間認知には居住地の周囲の地形、年齢、動きの有無が大きな影響要因になっていることが明らかになった。それぞれの要因をさらに細かく分析するため、平成11年度は直接観察のフィールドワークによるデータ収集を行う。
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