初年度の主要目的は、(1)既存データの部分的分析を通して、認知的要因のコーディング法の厳密な同定を行うこと、(2)平行してのフィールドワークによる補助的サンプル収集、の2点であった。 まず、(2)のフィールドワークでは、東京城南地区に限定してフィールドワークを夏に行い、これまでのサンプルで手薄であった40〜50代話者5名の長時間インタビューに成功した。話者は区役所(世田谷、目黒)の文化関係の部署で事情を説明し、適当な話者の紹介をお願いした。それぞれのインタビューでは、DATレコーダによる録音を行い、極めて質の高い録音資料を得ることができた。 既存データの部分的分析では、まずデータの収集からデータの基礎をなす録音資料の文字化に至る作業の流れを確立した。試行錯誤の末、DAT録音資料を、まずDATレコーダの上で一分ごとのプログラムに分割し、それからCD-Rと即に同時に焼き付け、CD-Rを保存用、MDを文字化作業用に回すのが最も効率的だと言うことが分かった。 現在少なくとも日本語では統一的な文字化洋式というものは存在せず、各自の目的に応じて各様のフォーマットが行われているのが現状と思われる。ここでは、「大まかな文・一発話、さらに文節単位で区切られた漢字仮名交じり、およびカナ」という形で行うこととした。それぞれの文・一発話にはテープ番号、プログラム番号、そのプログラム内での発話通し番号、そして話者のイニシャルからなるIDを付してある。そしてカナと漢字仮名交じりの2バージョンを作成することで、可読性と検索性の二つを満たすことにした。なお、本文では、<L>(笑い)と、割り込みを示す'/'の2つの付属情報のみを付け加えてある。こうした流れを確立した後、今年度フィールドワークで得られた録音テープをほぼ文字化することに成功した。
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