二年計画で行われている本研究では、基本的に本年度は記述的な研究、次年度は理論的な研究に焦点を当てているが、本年度は以下のような成果を得た。 1. データ収集:データの収集に関しては、現地調査を行った。本年度は、鹿児島県3地点(川辺郡笠沙町・川内市・出水郡長島町)及び熊本県3地点(牛深市・天草郡天草町・天草郡苓北町)に赴き、各市町村の教育委員会の協力の下、現地調査を行った。また、熊本県天草郡龍ヶ岳町のインフォーマントからは、通信調査によりデータを提供していただいた。データ収集に関しては、鹿児島大学・熊本大学の先生方にもお世話になった。対象分野は、従来調査が不十分であった動詞活用形(特に動詞テ形)である。 2. データベース化:収集したデータは、すべてすばらしい音質でMD(ミニディスク)に録音されている。調査の全内容はMDに録音されているが、そこから重要な部分だけを抽出した公開用のMDの作成については途中段階である。次年度でも継続して行う作業である。文字(音声記号)データベースに関しては、上記6地点で調査した項目についてはすでに完了している。 本年度は6地点しか現地調査ができなかったが、本研究の目的の一つである『海の道』の概念の想定が可能であるという見通しは得られている。次年度は、調査地点を増やすとともに、この概念の定式化に向けて理論的枠組みを構築する考えである。
|