1. 研究の当初は、行政組織の類型として、ヒエラルヒー型/非ヒエラルヒー型という対比を念頭に置いていた。しかし研究の過程で、上位機関が下位機関を個別の事項について指揮監督する、従来のヒエラルヒー型組織と対比させて、上位機関が下位機関に最終的な目標を提示させた上で、包括的に資源(予算)を分配する、新しいタイプのヒエラルヒー型行政組織をモデル化するに至った。このような組織は、経済学、特に経営学の影響を受け、最近ドイツの地方公共団体において、「新制御モデル」として盛んに導入・実験されている。この新制御モデルについては、民主主義的正統性が下位機関にまで十分伝導されるか、行政に課される公共善実現の任務が効率性・競争の犠牲にされないか、十分注意する必要がある。しかし他方、従来のヒエラルヒー型の行政組織は、個別の行政作用のコントロールにこだわるが、上位機関による個別の行政作用のコントロールは現実には困難であり、その上、下位機関の創造性や柔軟性のポテンシャルを活用しないため、却って、民主主義的正統性を十分伝導できず、公共善を実現できていない。こうした点にも注意する必要がある。非ヒエラルヒー型組織の研究と合わせて、ヒエラルヒー型組織についても、来年度さらに考察を深めたい。 2. 今年度から公務員法の研究会に参加し、公務員組織の独立性、公務員の地位の斉一性や安定性を重視した従来の法制度を、官民交流、勤務形態の多様化が要請される中で、根本的に見直す必要性を認識した。これは、行政組織法の改革とパラレルに考察すべき問題であり、来年度は法制度改革の具体的な指針を提示できるよう研究を進めたい。
|