本研究は、イギリス大臣責任制の現代的変容として注目される、(1)庶民院による独立行政法人の統制監督、並びに、(2)庶民院に対する大臣および公務員の政治責任の確保と配分をめぐる習律を対象とする。本年度は、このうち前者を主な対象とする論文の執筆準備および執筆に従事した。第一に、イギリスにおける大臣責任制および独立行政法人制度に関する研究資料の網羅的収集に努めた。具体的には、イギリス公法学および比較憲法学関係文献を購入し、国立国会図書館などに調査研究旅行を行った。さらに、電子媒体を用いて議会文書などの第一次資料を効率的に利用し、インターネットを通じて現行制度の運用に係る最新の公式情報を入手するために、パーソナルコンピューター式をインターネットに接続する環境を構築した。また、収集した研究資料を整理するにあたり、研究補助者に謝金を支払った。第二に、以上の過程を通じて収集した研究資料を活用して、独立行政法人制度の構造および運用の歴史的展開並びに現行制度の運用を中心に、実証的に分析検討した。この結果、独立行政法人制度がもたらす、(1)大臣責任制の組織規範としての省庁制をめぐる変容、並びに、(2)大臣および公務員に対する政治責任追及および統制監督制度に関する習律の変容について、知見を得ることができた。これらの知見は、論文執筆を継続して、庶民院に対する大臣および公務員の政治責任の確保と配分をめぐる習律に関する研究と併せて、次年度以降に公表する。なお、本研究に関連して、「国政調査権の意義と限界」と題する小論を執筆し、議会による政治責任追及のための代表的制度である国政調査権について、我が国の学説および実例を分析検討した。
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