支配株主の情報開示義務に関して、ドイツの株式法の状況について研究した。とりわけ、支配権の変動をもたらす支配株式取得による企業買収の局面をとらえて、支配株主の情報開示のあり方について検討した。このような企業買収においては、まず株主の保護が問題となり、またそれが敵対的企業買収であれば、支配権取得を意図する者と対象会社の経営者ないし、支配株主との関係も問題となる。敵対的企業買収において対象会社の経営者が企業の維持に務めるべく、積極的に防衛策を探ることにつき、ドイツでは、株式法119条1項8号に基づき、株主の権限であるとの理由で批判がある。そこで、株式を大量に保有する株主の開示規制が重要であるとされる。また敵対的な買収でなくても、支配株主が株式を売却する際に獲得する支配権プレミアムが、少数派株主との関係で問題となり、この意味でも、支配株主の開示規制は重要性を増す。 わが国では、支配株主の取引については、商法は特別の規制を行っておらず、ただ、投資家保護の観点から、証券取引法が、5%ルールや公開買付等の規制を行なっているにすぎない。 これに対し、ドイツでは株式法20条の「通知義務」を通じて、株主の開示規制が行なわれ、また、支配権プレミアムの問題につき、支配株主の行為規制として、平等取扱い義務が課せられるとの学説がある。 次はアメリカの状況について検討していきたい。
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