現行法制度における欠缺部分ともなっている不動産担保権の私的実行について、その手続的適正を図るための法規範のあり方について示唆を得るべく、不動産担保の私的実行について明文をもって規定をしているアメリカ法を中心して考察をすすめてきた。前年度は、アメリカ現行州法の網羅的検討、およびモデル法である統一土地担保法策定までの経緯とその内容の考察を行った。今年度行った研究の概要は以下のとおりである。 まず第一に、前年度において検討をすすめた統一土地担保法に対する学界、実務の反応について考察を加えた。現行法を現代化し、統一したものにするべく策定されたモデル法であるが、現時点ではいずれの州においても採用には至っていない。このモデル法の問題点については、学界あるいは実務において種々指摘されている。担保権実行手続を簡易化させることと、適正性を確保することのバランスをどのような形で実現させるか、という種々の議論の検討から、合理的な手続法規範にも多様な方向性をとりうることが明らかになった。 第二に、競売手続が合理的な手段たりうるものとされているドイツ法の再検討である。競売手続の不合理性を避けるべく、わが国でも私的担保権実行が選択されているが、ドイツでは競売手続によっても、より高額な換価が実現されているといわれており、ドイツ法との対比からわが国の競売手続の問題点を検討し、いわば裏の側面から私的実行型担保のあり方について考察を行った。 第二に掲げた点については、なお研究を継続している段階である。次年度において、この点につき引き続き検討を進め、最終的にわが国における規範定立のための提言として成果を発表する予定である。
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