本補助金による各医療・福祉施設等の視察・調査、及びそれらを基にした検討を通じて、介護保険の適用下におかれる施設入所サービスでは、ターミナル(終末期)にまで及ぶケアが求められざるを得ないにもかかわらず、施設類型・法定配置人員・介護報酬などの面で、従来の制度枠組みがそのまま維持されることから、とりわけ福祉施設における包括的介護サービスの提供に限界があることが明らかになった。一つには、こうした施設類型(療養型病床群、老人保健施設、特別養護老人ホーム)の枠組みを取り払い、医療職と福祉職を組み合わせた施設体系の一本を図るべきである(配置人員に一定の幅をもたせ、施設毎の裁量に委ね、特色を出させるとの対応はあり得る)。第二に、医療職(とりわけ看護職)と福祉職のうち、後者がなし得る業務の範囲を広げる(具体的には、ターミナルケアにあたり、酸素吸入装置の操作など最低限の処置を行うことを認める)ことが不可欠であり、そのためにも教育制度の高度化が必要である。少なくとも、介護福祉士の養成カリキュラムの強化や、現在の1級、2級、3級ヘルパー養成制度に代わる国家資格の導入が目指されるべきである。 在宅サービスについては、ケアプランの作成にあたり、在宅サービス提供の中核となる介護支援専門員につき、実務に就くことを前提として、定期的研修義務の付加など、資質の向上を図るための試作の整備が不可欠である。 なお、本研究と関連して、国立社会保障・人口問題研究所『季刊社会保障研究』36巻2号(2000年9月刊行)に「介護保険制度と利用者の権利擁護」と題する論文を掲載準備中である(未脱稿)。
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