本研究は少年司法における少年の手続参加権保障の観点からの比較法研究であるが、まず第一に、本年度は、手続参加権という概念が少年司法に特有の適正手続保障の中核をなすということを明らかにした。これは、昨年5月に国連子どもの権利委員会で行われた子どもの権利条約のわが国の実施状況審査を傍聴することでも確認できた。なお、これらについては論文として公表している。 第二に、比較法研究の対象であるニュージーランドの家族集団会議およびアメリカ合衆国のティーンコートに関する文献研究を行った。特に、ティーンコートについては、全米レベルでその推進に力を注いでいる全米プロベーションパロール協会(AmericanProbation Parole Association)および全米法律家協会(American Bar Association)のトレーシー氏およびポーラ氏の論稿を翻訳した。これについては後掲拙著に収録される。 第三に、ケンタッキー州およびカリフォルニア州の実際のティーンコートを見学して、それを運営しているコーディネーター、裁判官、弁護士、そしてボランティア学生等にインタビューして、その実態を調査した。その一部についても、同様に後掲拙著に収録される。 第四に、ティーンコートという少年の手続参加の観点を意識した新しい制度をわが国導入する可能性があるのかをその手続的側面を中心に検討した。さらに、導入した場合の教育効果、犯罪抑止効果等について、特に法的なレベルからどのような評価が可能であるかを検討した。これらについても、後掲拙著に収録される。 最後に、1999年7月頃に、拙(編)著『ティーンコート』(現代人文社)が発刊されるが、ここでは、弁護士、家族法学者、教育学者等の参加を得て、ティーンコートを多角的かつ包括的に分析検討して、わが国における新しい少年非行防止策の導入の可能性について記している。
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