本年度も昨年度から引続き、少年司法における少年の手続参加権保障の観点からの比較研究を行った。 本年度は、昨年度においてティーンコートについての基礎的調査および文献研究の一部を終えたので、その成果を、山口直化編著『ティーンコート--少年が少年を立ち直らせる裁判』(1999年12月)として編集・出版した。本書は、ティーンコートの概要、理念および目的(第1章)、わが国におけるティーンコート導入の可否と課題(第2・3章)、様々な研究者によるティーンコートの評価(第4章)およびティーンコート運営マニュアル(第5章)をおさめた包括的研究書である。少年の手続参加の視点を考える新しい少年司法制度のあり方を模索する書である。 さらに同観点からの研究として国際人権法の研究も行った。まず、1昨年6月に国連子どもの権利委員会によってなされた勧告についての共同研究を行った。特に少年司法の部分について、いかにして手続参加の観点を含めた改革を成し遂げるべきであるかを論じた。これについては、「少年司法一-急務とされる国際人権基準に基づいた少年司法改革」DCI日本支部編『子ども期の回復』として著わした。また、同様の観点からわが国の少年法「改正」を批判した。これについては、「国際人権基準に反する『改正』法案」団藤重光地著『ちょっと待って少年法「改正」』として著わした。さらに、同様の観点からみた少年事件での被害者間題を論じた。これについては、「少年事件と被害者の権利」田島泰彦他編『少年事件報道と法』として著わした。 また同じく国際人権法の観点からの子どもの保護、特に子どもが犯罪の被害者となることを防ぐための条約の研究にも着手した。これに関連する業績としては、「越境組織犯罪対策に関する国連会議とわが国の組織犯罪対策法案」『季刊・刑事弁護/19号』を残した。
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