本研究においては、今年度は主として、近年大きく流動化している国連活動全般(「紛争予防」、「平和維持」、「難民保護・帰還」、「停戦後の国家再建」、「人権保護」など)と「人道支援活動」とを理論的に整理付ける作業を中心に行った。この場合、旧ユーゴスラビア、ソマリア、モザンビーク、ルワンダなどのケースを取り上げて検討を行った。他方、資料収集などに関してはある程度行えたものの、“人道支援活動の深刻化、複雑化、グローバル化"といった国際情勢を念頭に置きつつ、既存の関連するアクター(「国連難民高等弁務官事務所」、「紛争地域に派遣されるPKO」、「世界食糧計画」、「国連児童基金」、「世界保健機関」、「世界銀行」、「国連開発計画」、「NGO」など)の人道支援業務をめぐる協議関係と競合関係の側面を実証的に解明する作業については十分に行えなかった。これについては来年度の課題としたい。また、ある程度は予想していたことであったが、カナダ関連の資料(公式資料、新聞、学術雑誌その他)を日本で参照するにはやはり困難が伴うものであった。これらの点を踏まえつつ、国内事情、国際的地位、外交理念、具体的な政策内容などの様々な観点から、日本とカナダの人道支援活動分野における対国連政策の考察へと研究を進めていきたい。そして、最終的には、将来の国連の人道支援活動はどうあるべきか、またそれに対して加盟国、とりわけミドルパワー諸国はどのような対国連政策を策定すべきなのかについての考えをまとめたいと考えている。
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