本年度の研究実績は、基礎文献の購入、原文書の複写、消耗品の購入、および謝金によるデータ整理に大別できる。 まず、基礎文献の購入としては、『アジアから考える周辺の歴史』、『イギリスと20世紀世界』、および『日本外交史ハンドブック』といった東アジア外交史に関連した近刊書を購入し読解した。 また、原文書としては、国立国会図書館憲政資料室所蔵の上田仙太郎文書を複写した。上田仙太郎は昭和初期の日本を代表するソ連通外交官であり、近年公開された上田仙大郎文書を活用することで当該期日本の外交関係を内面から解明することを試みた。一例を挙げれば、大正9年の上田仙太郎宛清浦奎吾〈後の首相)書翰には、国際連盟への参加に失敗したアメリカに対する懐疑的見解が克明に記されている。 消耗品としては、ファイルを購入し、外交史データの保存に充てた。さらに、前年度に提出した博士論文「東アジア国際環境の変動と日本外交-1918-1931-」を増刷し、専門を共有する研究者に助言を求める際の素材とした。 謝金は主に、英語、ロシア語、中国語の各国外交文書を翻訳することに使用した。とりわけ、ロシア語と中国語の文献には近年新規に公開されたものが多数含まれており、1920年代の東アジアをめぐる外交史研究に実証面から貢献する部分が少なくない。それ以外では、上述の基礎文献や外交官個人文書のデータを整理することにも謝金を活用した。
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