本年度は、研究計画どおり復帰後の沖縄振興開発政策に関する事例研究を概括的にまとめることができた。すなわち、72年策定の第1次沖縄振興開発計画、82年策定の2次計画、92年策定の3次計画の決定過程を実証的に明らかにすることを通じて、沖縄県と沖縄開発庁との中央-地方関係の特質とその変化を具体的に把握することができた。 3次にわたる沖縄振興開発計画の策定過程を沖縄振興開発特別措置法と比較しつつ考察すると、以下の点をその特徴として指摘できる。第一に、計画原案策定権は沖縄県に存するものの、最終的には国が決定する計画ゆえ、県の原案が必ずしもすべて反映されるわけではない。3度にわたる計画策定においても、「基地の撤去縮小」を計画原案に盛り込もうとする県と開発庁との見解の相違が顕在化している。第二に、沖縄振興開発特別措置法は10年間の時限立法ゆえ、沖縄県および開発庁は計画策定に先立ち、特別措置法延長の必要性、すなわち国策として格差是正を行う必要性を中央政府に認知させる行動をとる。そして、特別関税措置、高率補助、あるいは沖縄開発庁の存続などを実現させる。この場合、沖縄県と開発庁は利害を一致させ、共同した行動をとる。このように、沖縄県と開発庁は、双方の利害を一致させ、格差是正を進めるための政策資源を獲得することを基本としつつも、時に独自性の強調をめぐって緊張を高める関係を形成している。
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