本年度は、沖縄振興開発計画に関する事例研究をまとめるとともに、文献や公開資料を通じて得られた知見を関係者へのインタビューによってこれを確証、補強する作業を行った。沖縄振興開発特別措置法に基づき92年に策定された第3次沖縄振興開発計画の作成過程を実証的に考察すると、沖縄県は一方において地域格差の是正を目指して現行開発体制に基づいた社会資本整備を進めるとともに、他方においては従来型の開発から脱却した独自の発展を目指している。こうした沖縄県における後者の動向は、96年に『国際都市形成構想』をまとめることによって体現されている。2ヵ年にわたる復帰後の沖縄振興開発政策の事例研究を、中央地方関係の観点からまとめると以下のように表現することができる。第一に、現行法制度の下、予算をはじめとする政策資源を獲得することは、沖縄の自立的発展の基礎条件を確立することになる一方で、対中央への依存を強化することにもなる。第二に、社会資本が整備されるにつれて、現行法制度の意義は次第に低下し、地方は多様な政策を展開するための新たな方向性を追求する。第三に、整備された社会資本を活用する形での地域経済の発展、産業振興が十分に行われず、計画目標が達成されていない。以上のような動向が併存する展開は、ほぼ北海道開発政策とも共通している。今後の研究課題として、こうした動向が諸外国を含めた他地域の開発法制・政策における中央地方関係とどこまで共通性を有するのかを検証する必要を指摘できる。
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