研究概要 |
本研究の目的は,現代マレーシアの行政・官僚システムに関する基礎的な情報を収集・整理作業を行い(データベース化),さらにその分析を行うことを目的としている。マレーシアは1971年以降1990年までマレー人優遇を基調とする独自の開発政策(新経済政策:New Economic Policy)を策定・実施した。この政策の実施を通じて経済成長と種族間の経済不均衡という2つの問題を克服することに成功した。本研究ではこれまでほとんど内外において研究されてこなかった政策の策定・実行過程の担い手である行政機構・官僚制度の特質を明らかにすることを最終目標とし,その基礎的な研究作業を行った。 これまでに政策の策定・実行過程に重要な役割を果たした総理府,大蔵,通産,教育など主要な官庁・官僚の基礎的なデータを収集,整理を行った。特に,1983年以降マレーシア政府は従来公表していた「官僚リスト」の公表を停めており,その意味でもこのデータベースは貴重かつ有益なものということができる。さらに今年度はこのデータをもとに新経済政策の実施過程と官僚・行政システムの特質を明らかにする予備的作業を行った。新経済政策はマレー人の経済的地位の向上を目的とするが故に,その実施過程においてはマレー人政党である統一マレー人国民組織(UMNO)内部からの様々な要求と,マクロ経済政策の安定ならびに財政政策の円滑な運営を図る官僚システムという2つの制度間での調整が政策運営の重要な鍵を握ることがわかった。 今後は重工業化政策など節目となる重要な政策およびその政策に関与した特定官庁をより詳細に取り上げて検討することによって,マレーシアの政策決定メカニズムの特質を明らかにすることが重要な研究課題となる.
|