本研究は、自民党一党優位体制の崩壊によって、連立政権(部分連合)が常態化するようになった日本の国会における立法過程を、議院内閣制を採用し、政権交代が作動している英国議会の立法過程と比較し、日本の国会の制度や運用をどのように改革することで、立法・審議機能を強化することが可能かを分析したものである。分析の結果、日本の立法過程では、官僚制が立法を主導しており、政権党の内閣を通じての指導力や、国会審議の政治的影響力が、英国と比較して弱いことが指摘できる。これに対して、英国の立法過程では、内閣が選挙綱領に基づく政策の方針を決定し、官僚制に対する指導力を確立していること、また、議会審議においても、内閣と影の閣僚の間の論争によって争点が明示され、バックベンチャーの造反投票や議員立法によって、議会が一定の政策に影響力を持っていることが指摘できる。 こうした認識は、日本の野党の中にも浸透するようになり、最近の日本の政府・国会の統治構造の見直しの中で、制度改革が一部実現するようになっている。特に、予備的調査制度や決算行政監視委員会の創設、党議拘束の緩和、副大臣制の導入と政府委員制度の廃止、超党派や市民の参加による議員立法の増大など、官僚制に対する内閣や政党による政治の側の指導力の確立、議会の自律的な活動による立法審議機能の回復が図られつつある。本研究では、こうした最近の日本の制度改革についての効果と問題点についての検討を行い、少数党調査権の制度化や野党の議員立法の審議権の確立、党議拘束の緩和による議員立法の促進、討論による議会審議の活性化について、政策提言を行った。
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