昨年5月に、インドネシアでは32年間に及んだスハルト政権が崩壊するという大きな事件が起こった。平成10年度の研究は、この経緯を追うことと、実際に政変前後を通して現地で放送されたニュース番組を入手する作業を中心に進めた。当時のテレビ視聴率データの入手も行った。5月政変は、本研究の申請時に想定していたもっとも大きな政治的事件であり、非常にタイミングよく資料収集ができたといえる。ただし、それだけに資料の分量も多く、ニュース内容の分類をはじめとした分析作業はいまだに継続中である。5月政変以外にも、民族対立に関するニュース報道の収集なども進めている。 その一方で昨年度は、1997年放送法の本文部分の翻訳と分析を行った。先行するいくつかの大臣令との異同を明らかにすることを通して、放送政策の特徴を明らかにすることに傾注した。そのほか、現地の新聞や雑誌の分析を通して、90年代の放送政策とファミリー・ビジネスとのかかわりについて考察した。それぞれの民放の企業概要についても調査中である。加えて、経済危機のなか経営が危ぶまれている民放局の動向を追跡した。 また、関連研究として、日本のマス・メディアが98年の5月政変をどうとらえていたかについても新聞の内容分析や送り手へのインタビュー調査を進めている。 本研究は国営放送と民間放送とのニュース比較に焦点を置くものであるが、今後は政権交代の前後での比較という視点も取り入れて分析を進めるに進める。幸い、前回97年総選挙時のニュース映像が入手できたので、99年6月に予定されている総選挙の報道との比較を試みたい。
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