97年から99年にかけておきたインドネシアでの政治事件のテレビ報道(主としてニュース)について、内容分析を試みた。具体的に入手した映像資料は、97年総選挙、98年5月のスハルト政権崩壊、99年総選挙、および大統領選挙である。報道内容の各局間の比較、および時系列的な変化を追っている。また、参考までに東チモール問題やアチェ問題、マルクにおける宗教対立など、国民統合に関わる政治問題についても資料を収集した。比較項目としては、報道時間量とテキスト内容の二点を中心とした。 データはなお整理中ではあるが、概ね、政権崩壊を機に報道内容に大きな変化が見られ、報道の自由へと向かう大きな動きが確認された。とくに97年と98年の総選挙では、野党に対する扱いの違いが顕著であった。また、視聴率データからは政治ニュースに対する国民の関心の高さが確認できた。 他方、この間に進んだ放送政策の変化の分析もすすめた。97年放送法と先行するいくつかの大臣令との異同を明らかにした。そのほか、現地の新聞や雑誌の分析を通して、90年代の放送政策とファミリー・ビジネスとのかかわりについて考察した。それぞれの民放の企業概要についても調査をおこなった。加えて、経済危機のなか経営が危ぶまれている民放局の動向を追跡した。また、98年のユヌス情報相の就任とその評価、99年のアブドルラフマン・ワヒドの政権誕生に伴う情報省の廃止などについて現地での調査をおこなった。ハビビ政権から現政権にかけて放送政策も自由化に向けた大きな変化が見られた。 また、関連研究として、日本のマス・メディアが98年の5月政変をどうとらえていたかについても新聞の内容分析や送り手へのインタビュー調査を行った。
|