まずヴィンテージ生産関数を技術的制約とした企業の異時点間の投資決定問題に、生産物価格、賃金率等の不確実性を導入した数理モデルを構築し分析しなければならない。そのために近年著しい発展を遂げた投資理論のサーベイを行った。これは、ヴィンテージ投資モデルが従来の新古典派生産関数を基礎とした投資モデルと比較して、どのような点で異なるインプリケーションを持つかを知る上でも重要である。このサーベイの結果は、研究ノートの形で「近年の投資理論の展開」と題して、『山口経済学雑誌』(第47巻2号)に発表している。 さらに、確率的制御問題を勉強し、不確実性下の企業の投資理論についてもサーベイを進めている。特に、新古典派的な枠組みの中で、いかなる場合に「不確実性の増大が投資を減少させる」という常識的かつ現在までの実証結果に合う結論が得られるのかについて、重点的に検討を加えた。その結果、新古典派的な生産関数を仮定しても企業の危険回避度が十分に大きければ、不確実性の増大は投資を減少させることが分かった。その数学的な条件については、“Risk-aversion and the uncertainty-investment relationship:a note"(Journal of Economic Behavior and Organization)において報告している。ヴィンテージ生産関数をもつ企業の不確実性下の投資行動に関する理論的研究の方は、数理モデルの原型がほぼ出来あがり、現在最適投資の性質を詳しく調べている。 実証研究ついては、現在主に、データの収集・加工を進めつつ、必要な分析手法(特に時系列分析の手法)について学習・研究を進めている。また、同時に従来の実証研究に関するサーベイを平行して行っている段階である。
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