ロシアの労働統計は、現在改革期にあり、1997、1998年の2度にわたって統計調査方式と、主要カテゴリーの定義の変更がなされた。これにともなって、失業率などの重要データが過去にさかのぼって、遡及的に改定され、1999年後半期に出版された統計集で公表されるに至った。公式労働統計のあたらしい枠組みの詳細を検討したうえで、あたらしいフレーム・ワークによる労働統計データを利用しつつ、ロシアの労働市場にかんする基礎的な分析を行うことは、本研究課題の遂行のための前提条件であり、ひとまずこの課題に取り組み、この成果を久保庭真彰・田畑伸一郎編著『転換期のロシア経済-市場経済移行と統計システム-』(青木書店、1999年11月)第7章「就業構造の変化」(pp.198〜222)として発表した。 そこで、ロシアの労働統計の仕組みと問題点について述べた後、就業統計を利用した分析を行い、ソ連経済システムの根幹にありソ連の経済発展の最大の阻害要因の1つであった全般的労働力不足と各企業の過剰雇用の共存という悪循環から、効率的な労働力の利用へという体制転換の最重要課題が、市場経済化の過程でどのような展開を見せたかということと、この間に生じた就業構造の変化を明らかにすることを中心に分析を提示した。労働力の効率的利用については、財生産部門を中心として、労働力抱え込みの傾向や効率的労働力利用への関心の低さが見られ、また電力においては大規模な過剰雇用が存在するなど課題を残していることを明らかにした。 現在は、電力部門を中心として鉱工業における生産統計の推計を行うための、方法論の検討を行っている。
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