今年度は、昨年度に続いて、政府が与える独占権の獲得競争や各種圧力団体間の競争などに見られるようなレント・シーキング競争に関する研究を行った。レント・シーキング理論は、1980年代を中心に、膨大な数の論文が発表されたが、それらのほどんどは静学ゲームを用いたものであった。私は、昨年度から、レント・シーキング競争を動学ゲームの枠組みの中で分析してきた。レント・シーキング競争を動学的に扱った数少ない文献においては、レント・シーキング競争へのレント・シーカーの参入に焦点が当てられている。これに対して、私は、レント・シーカーの退出行動に焦点を当て、ゲームの当初における過剰参入がある状況において、時間とともにレント・シーカーの数が調整されていくことを示した。この研究は、投稿中の専門雑誌から改訂の要請を受け、改訂したうえで、"Exit from Rent-Seeking Contests"として再投稿中である。また、昨年度来執筆と投稿を続けてきた論文"Asymmetric Rent-Seeking Contests with the War of Attrition"についても、同様に、改訂要請に基づいて改訂し再投稿中である。 今年度は、動学的レント・シーキングゲームにおいて、今期のレント・シーキング活動が今期の競争に勝利する確率だけではなく、来期以降の競争において勝利する確率にも影響を与えるようなケースを研究している。このような状況は、多期間の枠組みの中では以前の2つの研究に比べて、より現実的であると言える。この研究の主要な目的は、この設定がレント・シーカーの退出行動にどのような影響を与えるかということでありが、現在その研究は進行中である。
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