研究初年度である本年度は、(1)文献資料調査、(2)環境保全型エネルギーシステムにむけての費用負担制度のあり方を中心に研究を進めた。 (1)については、エネルギーシステムのうち、とりわけ電力システムに関連した国内外の諸制度に焦点をあてた。この研究で明らかになったのは、欧州(特にデンマーク、ドイツ)では、それぞれ独自の再生可能エネルギーへの投資に関する独自の補助システムがあることである。具体的には、デンマークでは風力発電システムを地域住民が共同所有できる諸制度が発達しており、またドイツでは、国家の補助政策に加えて、アーヘン市に見られるように、太陽光発電設備設置にともなう費用を電力料金に転嫁するシステム(アーへンモデル)を地方自治体が整備し、再生可能エネルギーの大幅普及を可能としている。またこうした具体的諸制度の研究と平行して、21世紀のエネルギー環境問題に極めて重要な意味を持つ気候変動枠組条約京都議定書についても分析を行った。 (2)については、エネルギー利用をめぐる環境問題に関する費用負担の制度を分析した結果、従来の補助金システムとは性格を異にする独自のメカニズムが存在していることが明らかとなった。これは、環境保全のための費用を調達するための一種の基金システムで、〈環境基金〉システムと位置づけることができる。この種の環境基金システムは今日数多くみられるようになってきているが、その中でエネルギー関連の汚染問題で最も古い歴史をもつにもかかわらずほとんど分析されてこなかった国際的環境費用負担制度として国際油濁補償基金(IOPC Funds)がある。本研究では、この基金の独自の性格と役割、また費用負担原則について分析を行った。その研究の重要な成果として、環境基金の費用負担原則には従来からある応能原則、応益原則、応因原則と異なる応責原則としてとらえるべき原則があることが明らかとなった。
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