研究概要 |
日本において,ベンチャービジネスと呼ばれる小規模企業を対象とした公共政策は,1970年代半ば以降産業技術政策の一部として導入された.80年代には店頭市場改革による市場フレームワークの再構築が試みられた.90年代には,企業者精神の希少性が焦点とされ,政策は創業支援へとシフトした. 本研究では,OECDの認識に示されているように,企業者を,「新しい小規模事業の創設とその成長」を主導する経済主体と,そのような企業者を他の企業者概念と区別するため創業企業者と呼び,その理論的定式化(マイクロ・ファウンデーション)を試みる.それとともに,潜在的な創業企業者のインセンティブをコントロールするための政策含意を検討する. その特徴は,創業企業者による創業が知識創造のプロセスを含み,そのプロセスに創業企業者が負うリスクの源泉を求めるという視点を導入したことである.本研究では,創業企業者がその知識創造のプロセスで直面する不確実性の種類によって創業を2種類のケース(革新性の程度の低い多くのサービス部門を想定したケースと製造部門や革新性の高いサービス部門を想定したケース)に分けて検討している. また,上記の理論仮説を検証するため創業企業者に対するアンケート調査を実施している.
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