環境技術が今日ほど世界の自動車産業を脅かしたことはない。中国は地球温暖化に直結する自動車の排ガス規制を放任すると、気候変動を加速させる危険性が高く、諸先進国の温暖化防止の努力を相殺してしまう恐れもある。米国ワールドウォッチ研究所によれば、1995年の世界のCO2総排出量は64億トン(炭素換算)の内、米国が23.0%で第1位、中国が13.9%で第2位となっている。現在のペースでいけば、2010には中国のCO2排出量は世界全体の37%を占め、世界最大の排出国になるとの予測もある。 一方、中国国家計画発展委員会の予測によれば、2008〜2010年の間に本格的なモータリゼーションが始まるといわれる。中国の自動車保有量を見ると、1998年には約1300万台であったが、85年から95年までの自動車の年平均増加率は12-14%であったことから、2010年には少なくとも2500万台を突破するだろうとの予測がある。このタイミングは中国のCO2排出量が世界一になる時期とは見事に一致している. 排ガス汚染の実態については、90年代初めに四川省成都市では全国で初めて光化学スモッグの発生が観察され、95年には上海でも初めて観察された。96年に中国政府は新しい「大気環境質量基準」を制定し、窒素炭化物(NOx)の排出基準に基づいて、全国の主要都市を調査した結果、北方では17都市、南方では10都市が不合格となり、ワースト5は広州、北京、上海、鞍山、鄭州の順になっている。また、98年中国国家環境保護局はこれまで有鉛ガソリンの使用を認めていたのを改め、99年末までに有鉛ガソリンの生産を禁止する通達を発表した。北京市政府も2000年までに軽トラックを改造して作られたタクシー「面的」を全廃すると決定した。(自動車エンジン技術に関する分析は別の機会に譲ることにする。)
|