1モデル 重複世代モデルに生存必要量と原始的生産技術という仮定を加え、最適動学経路を導出した。その動学は3つのケースに分類される。(1)天然資源の量が多く常時成長が可能なもの、(2)その量が少なく貯蓄がゼロになる安定解(トラップ)以外に解がないもの、(3)その量が適度に存在しトラップもあるが成長も可能なもの である。3番目のケースについて、所得援助と資本援助を比較すると、資本援助の方が効率的であることが示された。2番目のケースについて、一回だけ大量の援助を送っても解決しないことが明らかとなり、将来にどういう形であれ、援助を送り続ける必要があることが示された。この場合も、資本援助の方がより効率的であることも示された。小国開放経済の場合は、所得援助の方がより効率的であるという全く逆の結果を得た。 2データ 援助データとして最も有望であった「Public Data Bank of the OECD Development Assistance Committee」は既に絶版していた。そこで、各項目別に編集されているデータを可能な限り入手した。結果として、全く同じ情報を得ることはできなかったが、必要な項目はほぼ網羅できた。経済成長データとして最も信頼できる「Penn World-Tables」は改訂が未だ終了しておらず、最近のデータが含まれていない。そのため、国際通貨基金の「Government Statistical Year Book」や、世界銀行の「World Tables」を入手し、インフレと為替の影響のない経済成長率の年次データを作成し、鋭利改訂中である。 3研究の展開 各受入国の経済成長率とその国に対する援助総額の使用方法別支出との因果関係を統計的に明らかにする。次に、主要な拠出先(日本など)に限って分析したり、シュミレーションを試みたい。
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