研究概要 |
1,金融監督体制の問題に関しては、総務庁等の資料をもとに、わが国の現状と問題点を整浬し、組織論的なアプローチから理論的分析を行った。今回の分析では、わが国の公務員制度ないしは政府組織の特徴に注目し、報酬制度や人事ローテーションのあり方が、銀行監督行政を大きく規定していることを指摘した。また、外部監査制度や監督庁設立の意義等についても考察を行った。これら研究の一部は、平成11年度出版予定の郵政研究叢書『現代の金融と政策』(仮題)において公表予定である。 2,金融取引をめぐる法的ルールの分析に関しては、(1)金融機関の法的責任に関する内外の資料を収集すると共に、日本版金融サービス法の中で重要視されるであろう金融機関の説明義務と関与者責任について、ゲーム理論的なアプローチから分析を行った。具体的には、金融商品のリスクに関して情報の非対称性を仮定すると共に、裁判等における立証責任の配分や適合性の原則・推定規定等の要因が、金融取引の事前的効率性に及ぼす影響について検討した。研究成果は、各種セミナー(関西経済研究センター、神戸大学経済経営研究所等)において報告した。(2)金融機関の破綻処理の問題に注目し、一般企業の破綻との違いや、債権流動化におけるサービサーの破綻リスクの問題について考察を行った。この問題に関しては、今年度購入した東京商工リサーチの各種データベースや資料等をもとに、さらに研究を続ける予定である。 3,金融監督体制、金融機関の破たん処理、金融取引ルールのあり方の問題をめぐっては、本奨励研究の中間的な研究成果の整理および一般への啓蒙という意味も兼ねて、日本経済新聞の「やさしい経済学」で連載を行った(平成10年12月)。
|