マーケットマイクロストラクチャー理論の外国為替市場の分析への要用として、昨年度に引き続き、経済指標の発表と外国為替市場の反応について実証的に分析した。本年度は高頻度データ(UHFD)と経済指標の発表を市場に告げるオンライン情報提供会社のヘッドラインニュースのデータを用いて、為替レートの変動(ボラティリティ)と期間当たりのtick(論文ではtick密度)という二つの情報をもとに、事前に予定される経済指標の発表の外国為替市場の活動水準に与える効果を分析した。そこでは、市場へのtickの流入がポアソン分布にしたがうという仮定のもとに、為替レートとtick間隔の二変量同時確率分布にもとづく市場の活動水準を計測する独自の検定統計量を構築、利用している。 これまでの分析結果と同様に、物価に関わる経済指標の発表の効果が相対的に低いこと、その他多くの経済指標の発表は有意な影響を与えることが確認された。この物価水準の特殊な結果は、主にボラティリティに起因していることが分かった。物価水準はボラティリティはニュースのない日と違いがないが、tickの間隔はニュースのない日に比較してい短い。これは、物価水準は情報をもとに取引するディーラーには重視されていないが、対顧客ディーラーには利用されているというモデルと整合的な結果となっている。 今後は、経済指標の発表のサプライズ、事前の予想のばらつきの影響などをモデルに組み込み、分析する予定となっている。
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