本研究は2年計画で、奨励研究の1年目にあたる今年は、自動車産業のブランド戦略のどこにどのような視点で焦点を当てるか明らかにするため、主要企業(トヨタ、日産、ホンダ等)のブランド年表の作成を中心に行った。このブランド年表は、次年度行う予定である各企業のブランド戦略の変化、自社内ブランド間の関係、市場での競合他社とのブランド間関係を考察する際の基礎資料となるものである。ブランド年表の作成を通じて、各企業のブランド戦略が、主要顧客の変化、需要の拡大および自動車に対する消費者ニーズの変化等のデマンド・サイドの変化とともに、生産技術の進歩、開発体制の変化やディーラー網に代表される販売体制からの要求などサプライ・サイドの要因にも大きく関係していることが示された。今後は、今年の研究を踏まえ、各企業の主要ブランドの確立、多ブランド化への移行、定期的なモデル・チェンジ体制への移行など、ブランド戦略上重要だと思われる事柄に焦点を当て、さらに深くその実態を分析するとともに、ブランド戦略に限らずより広い視野からその原因を考察する予定である。また、企業ごとにブランド戦略に違いがあり、なぜそのような違いが生まれたのか明らかにすることも大きな課題である。 また、今年は同時進行でブランドの概念およびブランド・マネジメントに関する既存文献のレビューを行ってきた。これら既存研究からもたらされた理論を自動車産業のブランド戦略に当てはめ、理論の妥当性を吟味するとともに、これまで説明されていない理論課題を明らかにすることも今後の課題である。
|