研究概要 |
本研究では、米国における非営利医療組織の経営分析指標を、1)組織論研究を背景にした組織指標、2)財務論研究を背景にした財務指標、3)双方の理論を背景にした組織・財務指標に3区分し、それぞれの特徴と課題を明らかにすると伴に,以上の検討をもとに、日本の非営利医療組織と非営利福祉組織に適用可能な組織・財務指標を提示した。 米国における非営利医療組織の組織指標としては、規模、サービスの洗練性、サービス需要、マーケットシェア、医療費償還制度としての医療保険(メディケア(高齢者・障害者の公的医療保険)・メディケイド(低所得者層の公的医療保険))が重要であった。一方、財務指標としては、複合的指標である財務伸縮性指数(FFI)、財務生存力指数(FVI)、ファンド残高(Fund Balance)が重要であった。 これらの検討より、非営利医療組織の組織・財務指標としては、キャッシュフロー対総負債比率、ファンド残高による資金調達、ベッド数あたりの長期負債、稼働ベッド数あたりのフルタイム換算従業員数、組織論的特性(非財務論特性)では、カウンティのマーケットシェア、在院期間が重要であることが指摘された。 日本においてもこれらの指標を実際の非営利医療組織に適用し、組織の倒産予測や経営診断に活用すべきである。 さらに、これら組織・財務比率分析は、非営利医療組織だけでなく、非営利福祉組織にも適用されるべきである。その適用のためには、次の4点が解決される必要がある。 (1) 福祉分野の産業特性を採り入れた組織・財務指標の開発.(2)ファンド残高指標の精緻化。(3)非営利医療組織の産業特性である退院件数及びベッド規模に代わる、非営利福祉組織の産業特性である代替指標の開発。(4)財務伸縮性指数(FFI)、財務生存力指数(FVI)の間便化。
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