本研究は、上場企業におけるリース情報開示の実態を明らかにし、そして(脚注情報ではなく)その資産化がリース会計規制の理念に照らして重要であるのならば、制度の運用局面において、いかにして各企業の開示方法をそのように誘導するかを検討することを目的としている。そのために、研究期間中においては、まず(1)個別企業のファイナンス・リース利用実態と企業の業績および財政状況との関連、(2)個別・連結ベースそれぞれのファイナンス・リース利用実態と諸財務指標のいわゆる連単倍率との関連を検討し、ファイナンス・リース利用の財務的誘因を明らかにした。そして(1)では一般的に負債比率が高く、かつ営業実績の低調な企業がリースを利用することが明らかとなった。この結果をベースとして、諸外国におけるリース利用実態との比較を行うべく、2000年度においては海外において数回の学会発表を行い、広く意見を求め、従来会計の分野ではほとんど見受けられない、実態データに基づく個別事象ベースでの国際比較を行う。さらに、(2)についてはわが国に特徴的な財務報告制度と関連することであり、同じく2000年度に数回国内の学会発表により意見を求めた後に研究成果を公表する予定である。この結果と、非上場企業ではすでにファイナンス・リースの資産化を実際に行っている企業もあることなどを加味しながら、資産化の普及に向けての課題を議論し、その成果についても公表予定である。なお成果公表の遅れは、主としてデータ収集および整理に予想以上に時間を費やしたことによる。
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