研究概要 |
多国籍企業の経営戦略のなかで知的財産の重要性が認識され,国際的な知的財産を戦略の機軸に捉えて企業合併および買収ならびに売却を行うケースが増加している。本研究の目的は、企業が自社の経営戦略のなかで知的財産をどのように位置づけ,どのように会計評価しているかを調査・検討することである。 今年度の研究はアメリカ,フランス,わが国における多国籍企業の知的財産評価に係る文献研究および実態調査を中心に行った。 文献研究においては,知的財産に係る会計制度上の評価と個々の企業における経営戦略上の評価との違いについて考察・検討を行った。とりわけ,会計制度上は担保価値の観点からオン・バランスされている知的財産についてはできるだけ早期に償却する傾向が強いものの,個々の企業においては経営戦略の観点から知的財産をオフ・バランス項目として認識し,貸借対照表能力とは異なる次元で知的財産を評価していこうとしている点に重点をおいて分析を行った。 実態調査においては,監査法人やコンサルティング会社などに対し,個々の企業で特許権,ブランドなどの無形資産についてどのような会計評価を行い,またこれらの評価に対しどのような監査を行っているのかを直接,担当者にインタビューというかたちで調査を行った。実態調査では,時間的な制約および人的関係の欠如から個々の企業に直接,インタビューまたはアンケートを行うことができなかった。
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