発表論文"A cohomological characterization of Alexander schemes"で、スキームがアレクサンダーであることの必要十分条件がバイバリアント層の第1コホモロジーが消滅することである、と示したが、アレクサンダーであれば第2以上の高次コホモロジーも消滅するであろう、と予想して研究を行った(バイバリアント層の消滅予想)。また、バイバリアント層の消滅予想が成立すれば、超被覆によって高次コホモロジーが計算できることを示し、その詳細を投稿中の論文"Is Alexander property etale local?"で説明した。特に消滅予想を仮定すれば、アレクサンダーという性質がエタール局所的であることが証明され、Vistoliの予想が完全に解決されることになる。発表論文"On hypercoverings"は、そのための準備である。 一方、奥田俊一朗氏の協力を得て同様の議論をバイバリアント余層について行く、バイバリアント余層の消滅予想を仮定してトーリック多様体などの具体例において高次ホモロジーの計算を行った。代数多様体のChow群はバイバリアント余層をなし、Chowコホモロジーなどのバイバリアント層より計算が容易だという利点があるからである。計算の結果、消滅予想から期待される通りの高次ホモロジー群の消滅が起こっており、消滅予想の新しい傍証が得られた。
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