研究概要 |
本研究課題において本年度は,2次元尤度円周機構に対する契機となったFisher 円周モデルにおける情報量損失の構造に着目し,その構造の次元的な拡張にまず取り掛かることを行なった.当初は曲指数型分布族における3次元での拡張を考慮していたが,2次元から3次元への拡張の方向性自体,既に多次元への拡張を視野に入れたものでなくてはならなず,かつ3次元での球構造の定式化が多次元球構造の特殊化となっていなくてはならないことから,円周モデルの拡張を低次元に特有の方法ではなく,一般のn次元でも有効な拡張を行うべく拡張の方針が定まった. しかし 2次元尤度円周機構で取り扱った統計的曲率と尤度方程式との関係がそのまま容易に拡張できるものでないことも同時に判明したので,その意味では3次元での統計的曲率と尤度方程式の関係を把握することから始める必要があった.そのために,3次元空間での曲線や曲面の数学的曲率(Gauss 曲率,平均曲率)が統計的にみてどのように尤度方程式に関係しているのかを研究するに至った. そこで、Gauss 曲率や平均曲率に関して尤度方程式への関与を鑑みながら、詳細に2次元尤度円周機構との比較を行いつつ,3次元球面機構の定式化を探求していった. これらの研究に際して、購入した数式処理ソフトや統計処理ソフトをパーソナルコンピュータ上で駆使しながら、研究を行なっていった.只、最新のパーソナルコンピュータを購入したにも係らず,処理能力を超えるような尤度方程式からの解を求めなくてはならない事態になることも頻繁にあり,得られた結果ははなはだ少ない.一つの解決策として,対象となる問題をコンピュータに載せるまでの過程での単純化や効率化をも,3次元球面機構の定式化に関して考慮する必要性を認識するに至った.
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