研究概要 |
間欠カオスを生じるようなあるクラスの一次元写像の力学系のμ(A)=∞(μは不変測度)となるような集合Aに対して,エルゴード理論の基本的な問題である時間平均(Aへの軌道の滞在時間/経過時間)の極限について研究し,その極限の存在のための十分条件およびその極限値に関する結果を得ていた.この研究は,それまでの研究をさらに推進し,極限の存在を示していない場合について研究するものであった. この研究は複雑なダイナミクスを研究対象としており,その推進のためには,数値実験・シミュレーションによって,ある程度の状況を把握し,予測をたてることが重要である.このため,コンピュータを購入して活用した.また,この研究を理論的に確固としたものにするために確率論および力学系理論関係の図書を購入して活用した. さらに,確率論および力学系理論のそれぞれの専門家と直接に何回も会って,この研究の進展状況を説明し,意見交換を行ったり,専門的知識・資料の提供を受けたりした.また,本研究は確率論に基礎をおきカオス的力学系を研究するものであるが,そのような研究でこれまで多くの研究業績をあげてきたG.Kellerらと直接会って,この研究に関連したレビューを受けた. 以上のようにして研究を進めた結果,一次元写像の力学系に対して,ある条件のもとで,上記の時間平均の極限値が定まらずに振動することを示す定理を証明することができた.また,非常に特別な多次元の力学系に対して,一次元力学系に対して得られた結果を拡張することができた.
|