研究概要 |
線形回帰モデル Y_t=β_0+β_1x_t+X_t, t=1,2,・・・ を考える.ここに,β_0,β_1は未知のパラメータで,{X_t}は誤差項である.ここで,β_0,β_1の推定問題を考える.通常β_0,β_1の推定量として最小2乗推定量はよく用いられ,誤差項{X_t}が有限分散を持つとき,その性質はよく知られている.しかし,誤差項{X_t}は無限分散を持つとき,特に裾が重い分布に従うとき,最小2乗推定量の挙動はどうなるか,また,頑健推定量はどのように構成するかに関してはまだ十分議論されていない.本研究において,平成10年度では,以上のような問題について研究を行った.その結果,次の結果が得られた. (β^^<^>_0,β^^<^>_1),(β^^〜_0,β^^〜_1)はそれぞれ(β_0,β_1)の最小2乗推定量(LSE),最小偏差推定量(LAD)とする.誤差項{X_t}はiidで対称なα-安定分布S_α(σ,0,0)(0,α【less than or equal】2)に従うとき,次の結果が成り立つ.ただし,⇒は分布収束(弱収束)を意味する. n^<1-1/α>(β^<^>_0-β_0)〜S_α(C_<n1>σ,0,0), n^<2-1/α>(β^<^>_1-β_1)〜S_α(C_<n2>σ,0,0), (C_<n1>,C_<n2>はnとαに依存する正の定数である) n^<1/2>(β^〜_0-β_0)⇒(2W_0-3W_1)/(f(0)),n^<3/2>(β^〜_1-β_1)⇒(3(2W_1-W_0))/(f(0)) ただし,(W_0,W_1)は平均0,共分散行列(〓)を持つ2次元正規分布に従う.f(x)はX_tの密度関数である. 以上の結果において,LADに関する結果自身は新しい結果ではないが,その証明は新しい.本研究では,確率過程の弱収束を用いて証明を与えた.この発想は従来の証明と違って,{X_t}が時系列の場合にも拡張できる. 以上の結果は現在投稿中で,1999年8月10日〜18日にヘルシンキで開かれるISI第52回年会で発表する予定である.平成11年度の目標は以上の結果を{X_t}が時系列の場合に拡張すること,そして,もっと一般的なM-推定量の漸近的挙動を調べることである.
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