研究概要 |
今年度は、テーブリッツ作用素の有界性に関する研究を行った。特に,R^nの上半平面で定義された調和バーグマン空間におけるテーブリッツ作用素の有界性に関連したカールソン不等式の解析に焦点を絞って研究を行った。カールソン不等式は,元来,ハーディー空間におけるコロナ問題を解決するためにカールソンによって考え出されたものである。その後,複素平面の単位円板上で定義された正則関数からなるバーグマン空間においてもカールソン不等式が考えられるようになった。バーグマン空間においてカールソン不等式が考えられるようになった主な理由は,バーグマン空間上で定義された正測度をシンボルとするテーブリッツ作用素が有界であることと,その測度がカールソン不等式を満足することとが同値だからである。 研究代表者は,これらの事実を踏まえ,0<P【less than or equal】1のときの調和バーグマン空間におけるカールソン不等式の解析が,一般的なシンボルを持つテーブリッツ作用素の有界性を特徴付ける研究の突破口になるのではないかと考え,その研究を行い次のような結果を得た。この結果は,R^nの上半平面上のσ-有限速度がカールソン不等式を満たすための必要十分条件を完全に与えたものである。以下に主定理を述べる 主定理 0<p【less than or equal】1,p【less than or equal】q.r>-1とする。また,μをσ-有限正測度,mを非負整数とするとき,次の(1 (1) ある定数C>0が存在して, (∫_H|D^αμ|^qdμ)^<1/q>【less than or equal】C(∫_H|D^m_yμ|^py^rdV)^<1/p> が,全ての調和バーグマン関数uに対して成り立つ。 (2) ある定数K>0が存在して,μ(S(B_t))【less than or equal】Kt^<(n+r)q/p+(|α|-m)q>が,全てのR^<n-1>の半径tの球B_tに対して成り立つ。
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